確かに、AIはセキュリティ運用における“分析”“要約”“分類”を高速化できます。
しかし、結論から言うと――

AIはSOCを“置き換える”ことはできません。
ただし、SOCを“強化する”ことはできます。

1. SOCの仕事は「判断と優先度付け」

SOC(Security Operation Center)の中心業務は、
アラートの確認やログの分析だけではありません。

実際には次のような流れを繰り返しています。

  1. アラートを確認する
  2. 関連ログを調べる
  3. 脅威の有無を判断する
  4. 優先度をつけて対応を決める
  5. ナレッジとして残す

つまりSOCの本質は、「情報処理」ではなく**“意思決定”**です。
この“判断”の部分は、AIが最も苦手とする領域でもあります。

2. AIが得意な領域と、苦手な領域

領域AIが得意AIが苦手
データ分析ログの要約、相関分析、分類文脈・意図・攻撃目的の推測
アラート対応初動チケット作成、定型調査優先順位の判断、リスク評価
レポート作成文章生成・整形企業特性や顧客文脈の反映
脅威ハンティング既知パターンの抽出未知の挙動や人為的意図の洞察

AIは「データを処理する力」に優れていますが、
「背景や意図を理解して判断する力」は持っていません。

たとえば、同じ通信でも
“管理者のテスト”か“内部不正”かを区別するには、
組織の状況や行動文脈を知る人間の目が必要です。

3. AIがSOCを“強化”できる3つの領域

それでもAIは、SOC業務を確実に効率化します。
重要なのは「どこまでAIに任せ、どこから人が介入するか」を設計することです。

① アラートの要約・整理

AIがログやアラートを自然言語で要約し、調査すべき情報を整理してくれる。
→ アナリストは“読む時間”を減らし、“考える時間”を増やせる。

② ナレッジの検索・再利用

過去のインシデント記録をAIが検索・要約して提示。
→ 「似た事例があったか」を即座に把握できる。

③ 自動チケット化・通知

AIがアラート内容を整理し、
対応担当・手順を自動で割り当てる。
→ 人が「まずやるべきこと」に集中できる。

これらの領域では、AIは**「置き換え」ではなく「支援者」**として活躍します。

4. “AIで自動化できる”と“AIに任せていい”は違う

AIが自動化できるからといって、
それをそのまま任せてよいとは限りません。

SOC業務の多くは、
「誤検知でも念のため対応するか」
「顧客への報告が必要か」といったリスク判断を伴います。

AIに欠けているのは、“説明責任”です。
なぜその判断に至ったのか、誰が責任を取るのか――
この領域は、人間のSOCが最後まで担うべき部分です。

5. Colorkrew Securityの考え方

Colorkrew Securityでは、AIを「人の判断を補助する仕組み」として使用しています。

  • SOC運用ナレッジをAIが参照・提案できる仕組み
  • アラートの要約・自動分類・初動支援
  • AIが出した判断を“人がレビューする”運用設計

AIはSOCを減らすのではなく、SOCを進化させる。
それが私たちの目指す“AI×SOC”の形です。